タイムズ・スクエアの広場化プロセスから戦略と戦術、公民連携のニューヨークのまちづくりについて教えてもらいました

2017年1月23日(月)の乙川リバーフロント地区まちづくりエリア再生連続シンポジウム「公共空間の大転換歩きたくなる街(ストリート)の作り方ニューヨーク編」に参加しました。東京大学工学部都市工学科の中島直人さんは、2009年ごろニューヨークに住まれていたことがきっかけで、近年注目を集めているニューヨークの公共空間について研究されています。誰がどのようなプロセスで道路などの都市のインフラや使われなくなったエリアを公共空間に変えていったか、ニューヨークの街がこんな風に変わっていったのかと興味深く聞くことができました。


中島直人さん

中島直人さん

取り上げられた事例は、使われなくなった鉄道の高架を公園に変えたハイライン、もともと港だった川沿いを公園に変えたブルックリン・ブリッジ・バーク、そしてタイムズ・スクエアの広場化のプロジェクトなどでした。シンポジウムではタイムズ・スクエアの広場化プロジェクトについての話がメインで、戦略と戦術、公民連携という2つの切り口から詳しく解説していただきました。レポートをまとめるにあたり、当日の中島さんのスライドと、中島さんの「ニューヨーク市タイムズ・スクエアの広場化プロセス」を参考にさせていただきました。

タイムズ・スクエアの広場化のプロジェクト

NYC Streets Metamorphosis というビデオの冒頭に2005年2012年までのタイムズ・スクエアの様子が映し出されています。ニューヨークの街は東西南北碁盤目状に道が整備されているのですが、ブロードウェイは古い道のため区画を斜めに道がはしっています。7番街とブロードウェイが交差する42丁目から47丁目までの「蝶ネクタイ」と呼ばれるこのエリアのブロードウェイ側の道を歩行者専用の空間にしたそうです。2005年の映像を見ると自動車の交通量が非常に多いと思うのですが、接触事故も多かったこのタイムズ・スクエアで、いかにして歩行者通路を拡張するかからプロジェクトはスタートしたそうです。

BIDとは

BID(Business Improvement District)とは、エリア内の資産所有者や事業者が、集客力や売上向上を目的として負担金を拠出して運営する民間の組織。タイムズ・スクエアの広場化プロジェクトでは、BIDとしてタイムズ・スクエア・アライアンスが民間組織として関わっています。BIDの収支に関しては、Neighborhood Development - Business Improvement DistrictsからダウンロードできるFY15 Annual Trends Report Executive Summaryの5ページ目に収入の情報があります。Assessmentという税による収入が75%と多いですが、Plaza Revenueという広場運営も5%ですが、雇用を生み出しているようです。

民間組織タイムズ・スクエア・アライアンスと行政の関係

中島さんの話を聞いて面白いと思ったのが、このタイムズ・スクエア・アライアンスというBIDが専門家組織とワークショップを行い、行政に色々な提案をしていたことです。中島さんのニューヨーク市のタイムズ・スクエアの広場化プロセスの3ページにある図2タイムズ・スクエアの広場化のプロセスを見ると、2007年4月のPlaNYC以前は左側の民間組織としてのタイムズ・スクエア・アライアンスがワークショップや現地調査を通して行政に提案をしていることがわかります。

戦略としてのPlanNYCとニューヨーク市交通局長

2007年4月にPlaNYCというニューヨーク市の総合的長期計画の中で「Ensure that all New Yorkers live within a 10-minute walk of a park(全てのコミュニティが徒歩10分圏内に公園を持つ)」という政策目標を掲げられました。2007年5月にタイムズ・スクエアの交通問題を管轄するニューヨーク市交通局の局長に、ジャネット・サディクカーンさんが就任。ジャネットさんは、TEDでもこのタイムズ・スクエアの広場化プロジェクトについて話されています。ジャネットさんのサイトでは街路がどう変わったのか2枚の写真を比較する形で紹介されていますし、Global Street Design Guideという本の中でも、歩道、自電車専用レーン、バス専用レーン、街路樹など生まれ変わったストリートデザインについて紹介されています。

戦術としての社会実験

市長と交通局長のリーダーシップの元、社会実験が実施されます。2008年8月に簡単な仕掛けによる広場化「ブロードウェイ・ブルーバール」、2009年5月から「グリーン・ライト・フォー・ミッドタウン」が行われました。


2010年1月にグリーン・ライト・フォー・ミッドタウンのレポートが出されているのですが、データで社会実験が交通や安全の面からも効果的だったことを示しています。社会実験の結果をデータで検証するということが大切なようです。ニューヨーク市交通局の局長のジャネット・サディクカーンさんは、TEDの中で以下のよなことを言われています。

このプロジェクトでは仮設であることが重要でした。どんな機能をするか、見せることができるからです。ご存知のようにデータ重視の市長と働いているのでデータがすべてでした。交通に良い影響があり、移動も効率良く、より安全、ビジネスにも良ければ、そのまま続けて―そうでなければ止めることにしました。元に戻せば良いだけで、害はありません。仮設だったからです。これが実行への決め手になりました。元に戻せると分かれば、そんなに心配はありません。

広場の恒久化

こうして2010年2月、ブルームバーグ前市長はタイムズ・スクエア広場の恒久化を宣言しました。デザインはノルウェーの設計事務所スノヘッタ。Times Square Reconstruction - Snøhettaからプランを見ることができます。

鍵は戦略と戦術、公民連携

シンポジウムの中で、中島さんは戦略と戦術、公民連携という言葉を繰り返し使っていました。ブルームバーグ前市長のPlaNYCという戦略に対して、調査やワークショップ、社会実験などを戦術として実践していく。タイムズ・スクエア・アライアンスなどBID組織、公共領域専門家組織、交通局とが連携して、公民連携でプロジェクトを進行させる。戦略と戦術、公民連携の重要性を語られていました。

ハイラインとブルックリン・ブリッジ・パーク

ちなみに、シンポジウムでは簡単な紹介だけでしたが、ハイラインやブルックリン・ブリッジ・パークも少し調べてみるとかなり気になる事例です。ハイラインは少し前の記事ですがニューヨーク「ハイライン」レポート|木内俊克に詳しく紹介されています。デザインを担当したフォールド・オペレーションズのプロジェクトのページからも、左右のボタンからハイラインの公園として使われている様子を見ることができます。生まれ変わる前のハイラインはThe High Line Before The High Line | BUILD Blogの写真のような見捨てられた場所で、この景色を知っていた2人若者の運動からプロジェクトがスタートしたそうです。ブルックリンブリッジバークの方も、デザインを担当したマイケル・ヴァン・ヴァルケンバーグのページで見ると素敵なアクティビティ施設を備えた公園ですが、元は使われていなかった産業用の港だったとか。ハイラインもブルックリン・ブリッジ・パークも色々なストーリーがありそうです。

ニューヨークのまちづくりが評価されている点

ニューヨークの事例は、短期間で実行したこのプロセスが評価されているそうです。最終的にストリート・デザイン・ガイドラインが作られていましたが、タイムズ・スクエア・アライアンスも20年間活動をしてきて原則がみえてきたように、まず活動する中から様々な発見があるようです。大事なのは都市空間の個性をどう捉えるか。岡崎は戦後復興の都市で、戦後復興の都市は例えば道幅が広いなどの独特の個性があるそうです。岡崎の街の個性をみつけて活動することがまずは大事だそうです。

Twenty Years Twenty Principles

タイムズ・スクエア・アライアンスは1992年から2012年までの20年間の活動を通して、気づいたことを「Twenty Years Twenty Principles」という20の原則にまとめました。公共空間には良いデザインと良いマネジメントが必要だとか、試すことの重要性、データの活用など、まちづくりだけではなく、共創の核心を当ているなと思いました。20個どれもいいんですが、その中から1つだけ。(日本語はGoogle翻訳)

11. Love what’s authentic and distinctive (本物と独特のものを愛する)

Once you know what’s special about your place, love it, nurture it and amplify it. Sometimes it’s drawing attention to things that are already there, sometimes it’s bringing more of the best. In your rush to remove the bad, never lose what’s good, even if those things seem buried, invisible, decrepit or undervalued.(あなたの場所について特別なことが分かったら、それを愛し、育て、増幅してください。時にはすでに存在しているものに注意を喚起していることもあります。悪いものを取り除くために急いで、たとえそれらの物が埋まって見えなくても、老朽化し​​たり、過小評価されたとしても、良いものを失うことは決してありません。)


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yamada takuo

有限会社アップルップル デザイナー

カメラと自転車と本屋が好きです。愛知県岡崎市在住。