WEBサイト制作者のためのHCDの理解 中級編

WEBサイト制作者のためのHCDの理解 中級編に参加してきました。前回で全5回の WEBサイト制作者のための HCD(人間中心設計)の理解は最終回だったのですが、今回は、WEBサイト制作者のためのHCDの理解 中級編ということで、2日間がっつりHCDについて学んできました。この中級編をもって一応WEBサイト制作者のためのHCDの理解は完結という形で、今後はこの中級編に参加したメンバーが中心になって名古屋にHCDを広めていきましょうという話もありました。

内容とタイムスケジュール

今回行った内容は以下の通りです。

1日目

  • 09:30〜:講義・課題説明
  • 10:00〜:半構造化インタビュー
  • 12:00〜:昼休み
  • 12:45〜:カードソート
  • 14:00〜:ペルソナ・プロフィール作成
  • 15:00〜:アクティビティシナリオ
  • 16:30〜:講評
  • 17:30 :終了

2日目

  • 09:30〜:インタラクションシナリオ
  • 11:00〜:ストリーボーディング作成
  • 12:00〜:講評
  • 12:30 :終了

タイムテーブルは、上記の通りです。多少前後していますが、おおむねスケジュール通りでした。今回は中級編ということで、はじめの講義の時間は30分ほどで、あとはグループワークと個人作業がほとんどでした。

HCDのセミナーでは、ユーザー評価が人気があるそうでペルソナ・シナリオ法はあまり人気が無いそうです。しかしながら、ペルソナ・シナリオ法は大切なのでしっかりやりましょうということで、中級編では半構造化インタビューからカードソート、ペルソナ・シナリオ法、ストーリーボーディングまで行う事にしたそうです。

経験学習モデル

浅野先生に、はじめの講義の中の経験学習モデルという話をしていただいたのですが、これが僕は個人的にこういう風に見ると確かにいいかもしれないと思う内容でした。

経験学習モデルとは、以下の4つの流れがあります。

  1. 実践(まず体験する、様々な状況での対応、たくさん体験する)
  2. 経験(エピソード化する、成功体験、失敗体験)
  3. 省察(実体験を振り返る)
  4. 概念化(マイセオリー化する、新しい概念をテストする)

多くの場合は学ぶということについて、1.実践と2.経験を繰り返す事に留まる場合が多く、いかにそれを3.省察と4.概念化に繋げ、実践、経験、省察、概念化と繰り返すかが重要という話。省察(実体験を振り返る)は、本を読んだりセミナーを受けてみたりする事で、時々クリニックを受けるように、自分が経験してきたことを振り返ること。これをせずに実践と経験を繰り返すだけではダメという話でした。

学びは上位に行けば行くほど抽象的になり、だからこそ応用が効く

また、HCDのセミナーは実学のように明日から使えるすぐ役に立つからではないが、5年後10年後役に立つかもしれない。観念的だけど徐々に役に立つもので、学びは上位へ行けば行くほど抽象的になるからこそ、応用が効くと言う話もありました。スキルは全く使えなくなる事がある。スキルを学ぶ事は悪い事ではないが、その過程で学んだものが重要で、技術だけにいかないように注意との事。

課題

要求仕様

要求仕様は以下の通りです。

モバイルによるクッキングレシピサービスの提案

【仕様】
・動作環境:
スマートフォン及びiPadなどのタブレット・モバイル端末

・データベース機能:
レシピのデータベースを備え、ユーザーによるデータの追加と削除が出来る。各データは少なくとも料理名・写真・材料・分量・調理時間・調理方法・カロリーを含むこと。
サービス開始時に2500件のデータを用意

・コミュニケーション機能
ユーザー同士がテキストメッセージを交換できること

課題はモバイルによるクッキングレシピサービスの提案ということで、4人の5グループに別れてインタビュー、カードソート、ペルソナ作成まで行い、その後個人作業でシナリオの作成、ペーパープロトタイピングとそれを用いてストリーボーディングを行いました。

半構造化インタビュー

被験者:20才前後の若者2名

調査方法:
・1名あたり30分〜45分の半構造化インタビュー
・サイトやサービスに関してではなく、各自の料理体験やレシピの使用状況について詳しく聞く。

半構造化インタビュー項目の作成:
4W1H
・Who(誰が)ユーザーか?
・What(何を)やっているのか
・When(何時)が一日の中で相応しいのか
・Where(どこで)行っているのか
・How(どのように)システム(レシピ)はタスクを補助しているのか

まず、4名のグループで半構造化インタビューを行いました。手伝いに来てくれていた学生の方たちにインタビューする事になったのですが、結果的に2人とも男性の学生にインタビューする事になりました。僕たちのチームは、チームリーダー、インタビュアー、書記、撮影+タイムキーパーなど役割を分担して、2人とも同じ役割でインタビューを行いました。被験者の料理体験やレシピの使用状況について詳しく聞くということだったのですが、被験者が男性だといろいろと流れを作るのが難しかったです。しかしながら1人目が男性だったので、2人目をまったく別のプロフィールの人(例えば料理好きの女性)にしてしまうよりは、同じ男性の被験者にした方がペルソナが作りやすいのではということで、2人目も男性にお願いをしてインタビューを行いました。

インタビューの手法には、構造化インタビュー、半構造化インタビュー、非構造化インタビューがあります。詳しくは、『情報デザインの教室』の52ページの 3-12 インタビュー に書かれていますので、そちらを参照していただければと思います。半構造化インタビューは “インタビューシナリオを作り、基本的にはそのシナリオにもとづくか、相手との話の流れで自由に話題を変えてインタビューを行う” というもので、非構造化インタビューよりも短時間にすみ、構造化インタビューよりも質があげれるメリットがあるようです。インタビューは非常に重要で、このインタビューで得た資料が基本的にはペルソナ作成などの素材になるので、いかにその要素の裏側に隠された事柄を聞き出せるかがポイントです。このインタビューの質が悪いとペルソナの作成などに影響が出てきてしまうようです。ペルソナ作成は一般的なユーザーではなく、明確な対象ユーザーを設定して外化して共有することなので、そのユーザーが本当に思っていることを聞き出す必要があります。インタビューは師匠に弟子がたずねるように、なぜそう思うのですが?どうしてですか?と根掘り葉掘り聞く必要があり、そういった意味では、インタビューアーを担当してくれたスズキさんは聞き方がうまいなぁと思って横でみていました。難しいのは、誘導尋問にならない程度に、なぜなぜなぜと聞かないといけないので、その辺は経験が必要と感じました。

評価グリッド法とラダーリング法

カードソートは評価グリッド法とラダーリング法という手法を使っておこないました。評価グリッド法とラダーリング法については、ワークショップの体験として、なるほどこうやって事象を要求価値に絞り込んでいくんだということは何となく分かったのですが、評価グリッドとラダーリング法ついては、まだうまく説明できない部分もあります。まず、ワークショップで行ったことから見て行きたいと思います。

ユーザーの事象

まず、インタビューで聞いた事柄を1つずつユーザーの事象としてカードにしていきます。その際の注意点として、単語で書かずに、できるだけ具体的な状況でカードにしていくことが重要だそうです。例えば、『お昼はコンビニが多い』ではなく、『お昼はお昼休みを自分の時間で使いたいからコンビニで済ますことが多い』といったような書き方です。これがなかなか難しく、後から撮影しておいた成果物のカードのところを見ると、どのぐらいできていたかなぁと思いました。先ほどのインタビューがちゃんと根掘り葉掘り聞けていないと、このカードの作成も単語単語になってしまう。

ユーザーの行動目標

次に、書き出したユーザーの事象をユーザーの行動目標というカテゴリーでグループ分けを行いました。写真にあるように、「コンビニ食が多い」「休日は1、2食で済ませてしまう」というユーザーの事象は、「1人の食事は早く安く済ませたい」というユーザーの行動目標にカテゴライズしました。一方で、「外食は話しながらゆっくり食べたい」「彼女と料理を作りたい」というユーザーの事象は、「家族や恋人と食事をする時は会話を楽しみたい」というユーザー行動目標にカテゴライズしました。こうすることで、バラバラだったユーザーの事象が、「1人の食事は早く安く済ませたい」と「家族や恋人と食事をする時は会話を楽しみたい」という2つのユーザーの行動目標が浮かび上がってきました。

ユーザーの本質的な欲求価値

最後に、ユーザーの行動目標から、さらに抽象的な価値判断、本質的にはどんな欲求価値が隠されているかを探って行きます。僕らのチームは、「1人の食事は早く安く済ませたい」と「家族や恋人と食事をする時は会話を楽しみたい」というユーザーの行動目標は、「シーンに合わせた食事がしたい」というユーザーの本質的な欲求価値があるのではないか。またインタビューしたユーザーの別の事象から「できれば料理は作ってもらいたい」「今は必要ないけど必要になった時のために料理をおぼえたい」といういうユーザーの行動目標をカテゴライズし、「自炊するのに必要な料理をおぼえたい」というユーザーの本質的な欲求価値も、もう1つもとめました。

つまり、カードソートから、20才前後の男性ユーザーは、「シーンに合わせた食事がしたい」と「自炊するのに必要な料理をおぼえたい」という2つの欲求があるのではないかと導きだしたわけです。

講評を経て、再度修正をしました

上記のように、インタビューで獲得した素材を、具体的な事象から抽象的な欲求に分析して求めていったわけなんですが、成果物を見ると簡単にできそうな感じにみえますが、やっているときは、本当に難しかったです。カードソートが済んだ段階で一度先生の講評が入ったのですが、どのチームもダメ出しをされてしまいました。まず、「ラフはいいけど、雑はダメ」線をきちっと書くことや、字をできるだけきれいに書くことなど、雑になっては人は見てくれないので注意しなさいという話や、ラダーリングした際にきちんとカードとカードを線で引っ張ってどの事象がどの欲求に繋がって行ったかを明確にしなさいなど、アドバイスをいただきました。実際に先生自ら、カードソートを実演してくださったりと、なかなか難しいところをより突っ込んで学ぶことができたと思います。

再び、評価グリッド法とラダーリング法について

評価グリッド法とラダーリング法について、上記のような分析手法が評価グリッド法という手法だそうです。その中で質問や分析を、『ユーザーの事象』『ユーザーの行動目標』『ユーザーの本質的な欲求価値』の3つの段階で行き来することがラダーリング法ということのようです。『ユーザーの事象』→『ユーザーの行動目標』→『ユーザーの本質的な欲求価値』のようにより抽象化して上げていくことをラダーアップ、『ユーザーの本質的な欲求価値』→『ユーザーの行動目標』→『ユーザーの事象』といったように具体的に下げてくることをラダーダウンと言うそうです。ラダーリングは、質問時や分析時にラダーアップ、ラダーダウンと構造化していく手法ということのようです。

評価グリッド法についてウェブで調べていたら、DESIGN IT! w/LOVE のブログにエントリーが書かれていました。棚橋さんはこの中で、ラダーリング法を質問法として解説してくださっています。ラダーリングを意識してインタビューを行うのは、かなりのレベルの高いテクニックのように感じました。すごいです。

また、ラダーリング法は、トヨタの「なぜなぜ5回」と「見える化」にも繋がるような気がしました。この辺りはそこまで詳しく知らないので、一度調べてみたいです。

ペルソナ・プロフィールの作成

インタビュー、カードソートを経て、ペルソナシートを作成しました。ペルソナシートの作成は比較的にスムーズに作成することができました。2人の学生にインタビューした内容を組み合わせて各項目を埋めて行きました。ペルソナについて詳しくは、『情報デザインの教室』の82ページの 4-17 ペルソナ手法 に書かれていますので、そちらをご覧ください。

アクティビティシナリオとインタラクションシナリオ

続いて、アクティビティシナリオとインタラクションシナリオを作成しました。アクティビティシナリオとインタラクションシナリオについて、講義のスライドでは、以下のように説明されていました。

アクティビティシナリオ
共通:ユーザーが行う作業について記述する
違い:ユーザーインターフェイスの構成要素の名前を使わない
・実装に依存しない
・抽象的

インタラクションシナリオ
共通:ユーザーが行う作業について記述する
違い:ユーザーインターフェイスの構成要素の名前を使う
・実装に依存する
・具体的

アクティビティシナリオは、具体的なデバイス名やサービスを記述すること無く、無理にでも取り除いて、“行う作業について” シナリオを書きます。つまり、コトについてのシナリオを書くのに対して、インタラクションシナリオでは、具体的なデバイスなどを記述してモノを含めたシナリオを書く事になります。こうしておくことで、アクティビティシナリオは、具体的なデバイスが変化していっても、その都度インタラクションシナリオをアップデートして引き続き使えるものとして残るわけです。

アクティビティシナリオ検討シート

ここからは個人作業になりました。まずアクティビティシナリオ検討シートの作成です。成果物は以下の2つです。1つではなく、2つ作ることも重要だということでした。

ここでまず要求仕様を見直します。最終的な成果物はモバイルによるクッキングレシピサービスの提案です。サービスはレシピのデータベースを備えたもので、スタート時に2500件のデータが用意されている。ユーザー同士のコミュニケーション機能もあるということでした。

まず、ペルソナ目標を設定します。カードソートで得た、『ユーザーの本質的な欲求価値』がここで生きてきます。1つ目のシートでは、「シーンに合わせた食事がしたい」という本質的な欲求価値でしたので、「休日に彼女に料理を作ってあげる」というペルソナ目標を設定しました。2つ目のシートでは、「自炊するのに必要な料理をおぼえたい」という本質的な欲求価値でしたので、「モチベーションをあげるために友だちとレシピを共有する」というペルソナ目標にしました。

ペルソナシートを元に、ペルソナが行動しそうな場面や行動を想像しながら、シーンの作成やアクティビティシナリオを作成しました。本来は箇条書きで順番に書いていく方がいいそうですが、ずらずらと書いてしまいました。ペルソナソートがあることで、ペルソナが行動しそうな場面がイメージしやすくなり、このペルソナならとりそうな行動パターンが明確になることがわかりました。

成果物を例にすると、漠然とユーザーが料理をしたいからレシピを調べるのではなく、具体的にこのペルソナは彼女に料理が得意と見栄を張っていて作って上げる約束をしてしまっていたからこそ、メニューを調べてレシピを調べるという行動に移ったと考えました。

最後にタスクを記述します。アクティビティシナリオからタスクをピックアップして右に書いておきます。

インタラクションシナリオ検討シート

次にインタラクションシナリオ検討シートの作成です。成果物は以下の2つです。

アクティビティシナリオ検討シートで記述したタスクを、もう少し具体的にインタラクションシナリオ検討シートに記述します。(僕個人としてはタスクは同じような感じになってしまいましたが)

インタラクションシナリオはスケッチを描きながら考えたら思ってもいない発想が出た

インタラクションシナリオを書いていく前に、自分だけが分かるレベルのスケッチを軽く描きながらやるといいという先生の話もあったので、写真のようなスケッチを描きながら、インタラクションシナリオを書いていきました。ここでまた面白い発見があったのですが、スケッチを描きながらやると、色々とアイデアが連鎖して、思ってもいなかった発想がでてきました。アクティビティシナリオがあることで、ペルソナの最終的な目標は維持されつつ、例えば、途中の旬の女性に人気のあるメニューを探すというタスクをどう実現するかについて、アクティビティシナリオを書いている段階では、「今月の旬なレシピ」というページがあって、その中のカテゴリーなりに、「女性に人気」というモノがあって絞り込むイメージだったのですが(スケッチの真ん中上の絵)、それだと、無限に求めているカテゴリーが存在しないといけないことになり、もっといい方法はないかなぁと思っていました。

スケッチを描いている途中の段階で、発想としてはmixiやTwitterに近いのですが、自分の友達ユーザーの女の子友達がオススメしているメニューにすればいいんじゃないか?と思い、旬なメニューから自分の女の子友達がオススメしているメニューから女性に人気な旬なレシピを探すというインタラクションを決めました。おそらくこれはアクティビティシナリオを単純に頭の中でインタラクションに置き換えていただけでは、出てこなかった発想のように感じました。

また、インタラクションシナリオを書いて行く途中で、どこで材料を調達するんだ?と思い、急遽この段階で、材料をスーパーで買うというタスクも追加しました。帰りの電車にモバイルで閲覧していることから、そのままスーパーに注文して帰りに受け取れたら便利なんじゃないか?と思い、そのようにインタラクションシナリオに記述しました。

ペーパープロトタイプとストーリーボート

インタラクションシナリオを作成して、それを元にペーパープロトタイプとストーリーボードを作成しました。A4の紙を2回おって、シナリオの沿って作成しました。ペーパープロトタイプは作りながら、ここはこう動くのでこうだなとか、1つ1つ動きを確認しながら作ることができました。

アクティングアウト(プレゼンテーション)と講評

ペーパープロトタイプができた人たち数名が、前のホワイトボードにペーパープロトタイプを貼り出して自分の作ったウェブサービスとそのストーリーをプレゼンテーションしました。面白かったのが、僕も含めた3名が、元々同じチームで、同じペルソナを使ってシナリオ作成・ペーパープロトタイプを作ったにも関わらず、最終的なアウトプットが全然違ったことでした。HCDの制作プロセスは制作のベースの部分で大きな軸になると同時に、制作物に求められるセンスや発想をさらにそこから発展させることのできるものなのかなと感じました。

最後に

2日間、中級編ということで非常に濃い内容を短時間で経験することができました。さらにワークショップは初級編では体験することが重要で質は求めないだったのに対し、中級編ではクオリティも求められていたように感じます。後から写真を見返してみると、本当にこの短時間でよくもここまでやったなぁと思いました。レポートもなかなかまとまらず苦労しました。講師の浅野先生、主催のモンキーワークスの古庄さん、川澄さん、手伝ってくれた学生の皆さん、そして、ともに学んだ参加者のみなさんありがとうございました。

当日の写真は以下にアップしてます。


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yamada takuo

有限会社アップルップル デザイナー

カメラと自転車と本屋が好きです。愛知県岡崎市在住。